2021年9月10日
繰越欠損金(Net Operating Loss = NOL)は、納税者の控除額が課税年度の総収入を上回った場合に発生します。 NOLは通常、総収入から控除額を差し引くことによって計算され、総所得に含まれない項目は通常、NOLの計算から除外されます。
2018年1月1日より前に始まる課税年度に発生したNOLは、繰り戻しが2年、繰越が20年まで許されていました。その後、2018年に施行された減税および雇用法 (Tax Cuts and Jobs Act=TCJA)により、2018年1月1日から開始する税務年度で、NOLは原則過去への繰り戻しはできなくなり、無期限に繰り越すだけに変更、かつ、繰り越したNOLは当期の課税所得を80%までしか相殺できなくなりました。従って、十分なNOLがあっても、当期の課税所得のうち20%は必ず課税される仕組みに変更されました。
ところが、2020年3月に可決されたコロナウイルス援助・救済・経済的安全保障法(Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security Act = CARES Act)により、TCJAが定める繰越欠損金の扱いに対し、一時的な変更が課されました。詳細は、2021年6月の弊所のニュースレターでもお伝えした所ですが、主な変更点は下記の通りです。
2018年、2019年、2020年に開始する課税年度に生じるNOLに関して5年間の繰り戻しを認める。
2018年、2019年、2020年に開始する課税年度にNOLが繰り越される、または繰り戻される場合、繰越・繰戻欠損金控除の上限を繰越・繰戻対象年度の課税所得の80%とする「80%当期課税所得制限」の適用外とする。
2018年1月1日以降に開始する課税年度に生じるNOLが2017年12月31日以前に開始する課税年度に繰り戻される場合、「80%当期課税所得制限」を不適用とする。
また連結納税制度を選択し連結申告を行う場合、連結ベースで連結欠損金(Consolidated NOL=CNOL)を決定します。手順としては、まずは、NOLを加味せずに、グループ各社の単体での所得を算出、その後それら単体所得を合算し、グループ全体で総収入が控除額を上回れば連結ベースの所得、その逆であれば、CNOLが発生します。従って、一部のメンバーが課税所得を持ち、他のメンバーがNOLを持っている場合、一部のメンバーの課税所得は、他のメンバーのNOLと相殺され、グループがCNOLを持っているかどうかを計算します。グループ全体で所得がある場合は、累積したCNOLを使用し、繰越控除が可能になります。
CNOLの計算では、次の各項目が考慮されます。
グループ内の各メンバーの個別の課税所得。
連結ベースのキャピタルゲイン純利益。
不動産および1年以上保有され、貿易または事業で使用された減価償却資産の処分による連結ベースでの純損失。
慈善寄付の控除の連結総額。
受取配当控除の連結総額。
公益事業優先株式の配当に関連するIRC§247控除の連結総額。
上記のように連結であるがゆえのルールが存在しながらも、CNOLはNOLであることに変わりありませんので通常のNOLのルールおよび繰越規則はCNOLにも同様に適用されます。
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